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この新制度案は、2009年の世界難民の日集会にて提示され、その後民主党政権になってから、関西を中心に議員や政党に呼び掛けているものです。
背景などはこちらから。

新たな難民法制度の主要構成事項

* pdf版はこちら

目次
 1.前文
 2.法制度の対象とする難民等
 3.法制度を所管する新たな行政機関の設置
 4.難民認定を求める者への制度情報の提供
 5.入国・難民認定申請に関係する上陸・滞在の許可
 6.難民認定申請の審査
 7.難民認定申請者、難民認定者・補完的保護対象者への支援及び第三国定住難民の受入れ
 8.難民制度の推進に関する企画・調整・広報
  1. 前  文

     難民認定は、形式的には行政庁の許認可を求める事業関連等の一般的な行政手続きであり、その不服申立ても行政不服審査法または行政事件訴訟法に基づく通常の審査・裁判手続きによって処理されるが、その実質はそれらとは全く異なる。
     申請者が行政庁に求める難民認定の可否は、申請者の生命を左右し、また身体の安全、行動の自由など生きていくこと自体に関わることであり、思想信条の自由など人間としての尊厳に関わることである。
     難民認定はこのように人間の存在に関わる重大な問題でありながら、海外から庇護を求めて認定申請する者は、大部分が日本語での意思疎通が困難であるうえ、自身の行為や身元を疑われるような書類や所持品を持たず、生活を支える資金も少なく、さらにその多くは難民認定制度自体も知らない状況にある。

     これらを考慮すれば、難民の認定と支援に関する法制度に関して、日本国民を主たる対象とした通常の行政手続きや手法とは異なる仕組みと判断基準が必要であることは明らかであり、難民条約を批准し、国際的な人権・人道問題である難民保護に取り組む決意をした我が国としては、この観点から難民に関する法制度を確立する旨を、前文で明らかにする。

  2. 法制度の対象とする難民等
    1. 難民:難民の地位に関する条約及び難民の地位に関する議定書の適用を受ける難民(いわゆる条約難民)。
    2. 補完的保護対象者:難民条約の適用に関する要件をすべて満たすものではないが、人道上の観点から国際的保護を必要とすると認められる次の者。
      紛争や無差別な暴力、あるいは甚大な人権侵害や公の秩序を著しく乱す事件による生命、自由及び身体の安全に対する重大な脅威のため、国籍国または常居所に帰ることができない者または帰ることを望まない者。
    3. 第三国定住難民:国連難民高等弁務官事務所が国際的に保護する必要がある者と認め、我が国に対してその保護のために推薦し、我が国がその定住を目的に受入れる者。

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  3. 法制度を所管する新たな行政機関の設置

    (1) 権  限
     本制度を所管する新たな行政機関は、① 難民認定申請の審査と審査結果に対する不服申立を審査する権限、② 難民認定申請者及び難民認定者・補完的保護対象者の在留資格の許可及び生活等の支援に関する権限並びに第三国定住難民の受入れに関する権限、③ 本制度に関する企画・調査、調整、広報等制度の推進に関する権限を有する。

    (2) 組織形態
     新たな行政機関は審査及び不服申立審査に関する権限を持つことから、特にその公正・適確な運用を確保するため、意思決定に関わる者が複数となる行政委員会形式の組織(以下「難民委員会」という.)とし、同時に、迅速・的確な運営と難民問題という特定分野に関することを考慮して、その分野の知識を持つ者が参加する少数者による構成とする。
     このような観点から、委員には、本制度が難民条約に根拠を置く人権・人道の国際協力の役割を果たすものであるため、難民の保護及び難民問題の解決を任務とする国連難民高等弁務官事務所、及び基本的人権を擁護し社会正義を実現することを使命とする弁護士の組織である日本弁護士連合会が、それぞれ推薦する者を含む。
     また国家行政組織上の位置づけは、内閣府の外局とし、委員の任命は内閣総理大臣が行い、委員会の運営事務は原則として他の行政委員会と同様。

  4. 難民認定を求める者への制度情報の提供

    (1) 一般的提供
     空港、港湾等入国に関係する施設を始め市町村役場等において、難民制度に関する情報が得られるようにする。この場合、情報を求め、利用することについて、匿名性が確保され、またその内容は、相談窓口、難民認定手続き、認定基準、支援制度などをわかりやすく、かつ実際にアクセスできるように概要を説明したものとし、英語のほか申請事例の多い国の言語によるものとする。

    (2) 個別的提供
    入国管理及び警察の業務に携わる職員は、難民認定を求める意思を表明した者及び認定制度を知っていれば難民認定を求めると推測できる者に対しては、速やかに(1)の情報を提供しなければならない。

  5. 入国・難民認定申請に関係する上陸・滞在の許可

    (1) 難民認定申請手続きをするための一時的な上陸または滞在の許可
    ア 入国時に、難民認定を求める意思を表明した者及び認定制度を知っていれば難民認定を求めると推測できる者に対して、入国審査官は難民委員会と協議し、30日を限度として、難民認定申請手続きをするための上陸を許可するものとする。
    この場合、入国審査官は、難民委員会との協議に基づいて、住居および行動範囲の制限その他必要と認める条件を付すことができる。
    イ 既に入国している者で、難民認定について上記と同様の状況にある者に対して、法務大臣は難民委員会と協議し、同じく30日を限度として、難民認定申請手続きをするための滞在を許可するものとする。
      この場合の付する条件の取扱いは、上記アと同じ。

    (2) 難民認定申請中の滞在の許可
     難民認定委員会は、同委員会が定める難民認定申請に関する所定の手続きに基づいて、同委員会に認定申請をした者に対し、審査結果が確定するまでの間(審査結果に対する不服申立及び裁判の期間も対象とする)、難民認定に関する行政手続き中であることまたは裁判中であることを理由として、我が国での滞在を許可することができるものとする。
    なお、許可する場合には、難民認定委員会は、申請者に対して、滞在期間、住居及び行動範囲の制限その他必要と認める条件を付することができる。

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  6. 難民認定申請の審査

    (1) 審査の構造と基準
    ア 難民認定申請の審査は、その結果が生命を含む人間として最も重大な法益にかかわることであるため、当初の審査とその審査結果に対する不服申立の審査の2層制とする。
    イ 難民の認定ができない場合は、同時に補完的保護の対象者であるか否かについて審査を行ない、その決定に対する不服申立は、難民認定に関する不服申立と同時にできるものとする。
    ウ 当初の審査及び不服申立の審査の権限を有する者は、難民委員会によって任命されるが、審査に関しては、任命権者や外部のいかなる者からも独立して判断を行う。
    エ 難民認定は、その基本が難民条約に基づくものであることから、その判断基準は、条約の推進を使命とする国連機関として国連難民高等弁務官事務所が明らかにしている難民に関する定義、解釈基準等に沿ったものであり、その主要な事項は公表される。
    また審査の判断では、申請者がその根拠を理解し、論点に対する具体的な反論ができるように、その理由が的確に示される。
    オ 難民または補完的保護対象者として認定された者に対しては、難民委員会が定住者としての在留資格を許可する。

    (2) 審  査
    ア 認定申請を審査し、認定の可否を決定する者を審査官とする。
    イ 審査官は、自ら申請者の事情聴取を行い、申請者が希望する者の立会いを認める。
     また事情聴取の記録は申請人及び立会人に提供され、申請者は修正意見を述べることができ、修正されない時はその意見が記録される。
    ウ 審査官は決定に際して、他の審査官の意見を聴くものとし、意見を求められる審査官は事情聴取に立会うものとする。
    エ 審査官は、庇護を求める申請者の心情や置かれている状況を理解でき、公正であり、誠実に職務を遂行できる者とする。また審査官は、申請者の出身国の人権に関する状況をはじめ、政治、経済、宗教、倫理・価値観などを客観的に理解し、これらに関する情報を収集・検索できる能力を有する者とする。
    オ 審査官は、審査の職務に就く以前に、また随時、審査の基本となる難民条約とその
    適用に関する国連高等弁務官事務所の基準文書と国内外の難民認定に関する決定及び判例をはじめ、人権に関係する条約・国際規約、国内法令及び海外諸国の難民関連法令についての研修、また海外情勢及び出身国情報の収集・検索方法についての研修を受けなければならない。
      なお、研修内容の概要は公表される。

    (3) 不服申立の審査
    ア 不服申立の審査は、行政不服審査法に基づいて行われ、その裁決をする者を審判官とし、裁決は単独の審判官によって、または複数審判官の合議によって決定される。
    イ 審査は、証拠方法に著しい制約があるため、申請者側と当初の審査官側の双方が参加して、不認定の理由を構成することとなった事実や申請者の発言、適用した法令等とその解釈などを明らかにし、同時に申請者の釈明・反論などを提示させ、審判官がそれら全体を直接見聞して、心証を得、判断できるように、対審的な審査形態をとするものとする。
    ウ 審判官は、裁判官、弁護士をはじめ裁定、調停、斡旋等の法的職務の経験のある者から選任され、非常勤も認められる。
    エ 審判官の資質及び研修の取扱いについては上記(2)の審査官と同様であるが、特に難民の認定に関する審査は、国内の通常の案件とは全く異なる状況の下にあり、しかもその結果は極めて重大な影響を持つ人道上の措置に関するものであることから、それらを十分に理解して判断する資質・能力を高めるものでなければならない。

    (4) 情報の収集・整理
     審査・審判に不可欠な出身国に関する情報や人権・難民に関係する国内外の法令と裁判・決定事例及び関係図書等を収集・整理し、審査官・審判官が必要とする情報を提供する資料情報センターを設置する。
     申請者及び申請者が指名する者もこのセンターを利用できるが、一般の利用については、審査・審判に支障を及ぼすことがない範囲で、認められるものとする。

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  7. 難民認定申請者、難民認定者・補完的保護対象者への支援及び第三国定住難民の受入れ

    (1) 難民認定申請者への支援
    難民認定申請者が、申請活動を支障なく行うことができるようにするため、
    ア 申請者が自ら、住居、医療等の生活条件を確保できない場合は、宿泊施設、食事、医療、教育等の提供などその生活維持に必要な支援を行う。
    イ 申請者が申請手続きを的確に遂行できるように、代理、相談、通訳・翻訳等の支援、また裁判に至った場合の弁護士の斡旋、訴訟費用に関する支援など、法的・事務的支援を行う。
    ウ これらの生活支援及び法的・事務的支援については、申請者の経済状況に応じて無償ないし一部負担とし、訴訟費用については申請者勝訴の場合に無償とすることなどが考えられる。

    (2) 難民認定申請者の就業
     申請者の就業については、上記(1)の公的支援を受けることなく、あるいはその一部を受け、自立的に申請活動を行おうとする場合、それを経済的に支えるものである限りにおいて認められる。ただし、次の場合を除く。
    1. 申請が明らかに根拠を欠いているとみられる状況にある場合
    2. 不適正な労働条件の下での就労、または就労によって申請者の身体的・精神的健康が損なわれる恐れがあるとみられる場合。

    (3) 難民認定者及び補完的保護対象者(以下「難民認定者等」という.)に対する支援
    難民認定者等には、国民と同等の生活条件が確保される必要があることから、
    ア 認定者等は、生活を維持するために必要な公的支援の対象となる。
    イ 認定者等は、日本社会で生活していく上で必要とする言語、社会・経済・文化に関する知識、就業に関する技能・技術について、研修・訓練を受けることができる

    (4) 第三国定住難民の受入れ
    ア 第三国定住に関する対象地域、対象者の決定については、生命、身体に対する危険の大きさ及び切迫性を基本とする。
    イ 第三国定住難民の定住者としての在留資格の許可は、難民認定委員会が行う。
    ウ 第三国定住難民と難民認定者等に対する支援に差異はなく、また申請者の支援に関連する部分もあることから、これらは総合的に取扱われる。

  8. 難民制度の推進に関する企画・調整・広報
    1. UNHCR及び難民支援に関わる団体と、難民及び関連制度について定期的にまた随時に意見交換を行う機会を設ける。
    2. 難民制度の在り方及び運用について、学識経験者の意見を求め、施策に反映させる仕組みを取入れる。
    3. 難民及び関連制度の運用に関する情報を可能な限り公表し、また定期的に報告として取りまとめ公表する。

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主催:世界難民の日2010関西集会実行委員会
後援:(社)アムネスティ・インターナショナル日本
問合せ先:RAFIQ(在日難民との共生ネットワーク)

大阪府高槻市大手町6-24  FAX:072-684-0231  メール:rafiqtomodati@yahoo.co.jp