●趣旨説明 |
この集会を開催するにあたり、在日難民の背景や支援の広がりを説明しました。
しかし、政権交代しても国として難民認定問題への取り組みは後回しになっている現状があります。支援者がいくら頑張っても支援の限界があることを説明しました。
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●難民、支援団体のリレートーク |
スリランカ難民とコンゴ難民が、それぞれの背景や入管の処遇問題について話をしました。
また、タイのビルマ難民キャンプへの支援を行なっている「日本ビルマ救援センター」が現地報告を少しされ、「自治労大阪府本部」からも外国の労働者と結びつきをはかりながら、現地の問題に取り組んでいることを報告されました。
会場内ブースや写真展・絵画展の説明も行なわれました。
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ビルマ難民が描いた水彩画展 |
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●基調講演 ファン・ウヨ国会議員 「新しい難民制度への挑戦―韓国の事例」 |
韓国は1992年に難民条約を批准し、94年から国内法「出入国管理難民認定法」の運用を始めましたが、2000年までは難民認定された人は一人もいませんでした。
2001年からは少しずつですが、難民認定者は増えており、2010年5月時点では総数183名となっています。
2008年に法改正(09年実施)があり、難民認定申請後1年以内に結果が出ない場合は就業許可を申請でき、また家族とともに住むことが出来る難民支援施設の建設などが決まりました。しかし、難民問題は出入国ではなく人権の問題です。さらに多くの課題を解決するためにNGOや弁護士グループの検討をまとめた「難民等の地位と処遇に関する法律案」(以後、法案)を2009年5月に国会に提出されました。
法案には、通訳・弁護士などに関する手続整備、独立した審査機関の設置、家族結合の保障など多くの改善点を盛り込まれています。
ウヨ議員は「2011年は難民条約が採択されてから60周年になります。この年までに法案を可決し、韓国が難民条約を守っていく国であることを示したい。同じ問題を持つ日本とも交流を深めていきたい」と締めくくられました。
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ファン・ウヨ議員の基調講演 |
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●パネルディスカッション 「隣国韓国の取り組みから私たちが学ぶこと」 |
ファン・ウヨ議員が急きょ、韓国に戻らなければならないということで、最初にファン・ウヨ議員と辻恵議員、アムネスティの中村さんの3人で辻議員からの質問とその回答という形で行なわれ(Part1)、次にキム・ジョンチョル弁護士と辻議員、中村さんの3人でディスカッションと言う形が取られました(Part2)。
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Part1
議員立法について、議員は自分の所属する党にとらわれず、10人以上の賛成で提案できることや国民が「議員は立法を作るのが仕事」という目で議員を見ており、実際に成立した法律は議員立法が政府立法よりもはるかに多いことを知りました。日本の立法は政府立法(内閣立法)が圧倒的に多く、立法そのものに違いがあることがわかります。
この法案については、韓国の人には歴史的に難民になった経験があり、国内での認識を少し変えれば世界の難民の問題に進むことになること、MGO・弁護士グループが検討し、UNHCR韓国支部も積極的であったことなどから、発議ができました。人権について救いを求める人たちと専門家を結び付けて問題を解決するシステムができてきたと思われます。法案についてはオーストラリア、スイス、カナダからも問い合わせなどが来るなど予想外の広がりがあるそうです。
韓国と日本は重要なパートナーであり、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカなどに地域連合があるが、アジアでも中国などとともに積極的な役割を担っていければというお話がありました。
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ファン・ウヨ議員とのパネルディスカッション Photo (C)Aya T |
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会場の様子 Photo (C)Aya T |
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Part2
キム・ジョンチョル弁護士からは、韓国の難民受け入れの現状をお話しされました。
韓国の難民制度は日本の制度の影響を受けていたようです。韓国語でも「ナンミン」と発音する「難民」という用語は人道的な要素が何もなく、実際単に「困っている人」というようなニュアンスで取り上げられています。
これまでの韓国の難民の制度と処遇の問題では、入国後でなければ難民申請が認められず、事情聴取は韓国語か英語であり、調書の確認はできず、審査には平均3年かかり、異議申立に口頭陳述はなく、裁判官は高い立証基準を用いられてきたそうです。
また申請者への支援はなく、住居を確保できず、就業は禁止され、まさに事実上の強制退去を促しているような状況だったそうで、日本も同じような状況にあります。さらに問題は「保護所」と呼ばれる拘禁施設は、日本の入管収容施設と同じような施設で、罰金と仮放免保証金という違いがあるだけで、それができないと行政機関が無期限で拘束する事態は同じだとわかりました。
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キム・ジョンチョル弁護士とのパネルディスカッション Photo (C)Aya T |
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韓国では、2008年に入管法が改正されたが、問題は山積み。
- 難民認定申請後1年以内に結果が出ない場合は就業許可できることになったが、申請に雇用契約書が必要なため十分機能していない。
- 衣食住が確保される難民支援センターが建設されることになったが、NGOが求めていた都市部・小規模分散ではなく、飛行場隣接地・大規模施設で法務部(日本でいう法務省)事務所と一体的なもとなっている。
- 6か月で申請処理し就業許可に至らないよう事務担当者は増えたが、公正さが懸念される。
など。
それでも、ある程度の医療保障が実現し、通訳は改善されたそうです。
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しかし、NGOが検討してきたものが含まれず不十分なため、独立した難民法案を提案しました。
- 難民要件を誤解の多い「十分な根拠のある恐怖」からフランスの法律にある「合理的な根拠のある恐怖」に変える。
- 空港での申請許可。
- 通訳の充実
- 弁護士ヘのアクセス改善
- 独立審査機関の設置
- 異議申立での口頭陳述
- 拘禁期間を原則6か月に限定
などが含まれています。
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パネルディスカッションの様子 |
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このような制度改革が韓国で進んできたのは、
- NGOや弁護士グループが深刻な人権問題として取り組み、政府も様々なプレッシャーを受けてきたこと、
- 2005年から改革検討を始めた時には法務部の職員も参加しており、一種の共感が形成されていたこと。
などが考えられるそうです。
現在、国会の委員会は法案の主旨に同感しており、人権を保護する国として韓国を宣伝できるとみているようです。
またファン議員は与党議員であり、法務部のトップは進歩的な考え方の人だそうです。
懸念としては、手続の枠を広げると公平性や透明性に欠ける、予算上の問題、難民制度の悪用などがあげられているが、2012年までには成立すると考えていると、明言されました。
私たちは韓国で、皆さんは日本で、この問題に取り組み、良いところをお互いに学び、チャレンジする機会が増えることを願うと締めくくられました。 |