難民等の地位と処遇に関する法律案
|
(ファン・ウヨ議員代表発議)
(日本語仮訳 全国難民弁護団連絡会議)
|
発議年月日: 2009年5月25日
発議者:ファン・ウヨ、キム・チュンジン、ソン・ポムギュ、キム・テウォン、イ・ハンソン、アン・サンス、ユ・キジュン、オ・ジェセ、イ・ソンホン、ヒョン・ギョンビョン、チョン・ハギュン、キム・ソンス、キム・ジョングォン、ウ・チェチャン、シン・ジホ、チョン・ヨオク、イ・ギョンジェ、イ・ドゥア、キム・ドンソン、イ・ジョンソン、ジョン・モンジュン、チャン・ユンソク、キム・ヨンソン、ホン・イルピョ議員(24人)
提案理由
大韓民国は1992年12月難民の地位に関する条約および同条約議定書に加入して以来「出入国管理法」で難民に関する認定手続きを規律しているが、約15年間その申請者が2,000人余りに過ぎず、難民として認められた者も100人に満たないなど、他の先進国に比べ、難民を十分に受け入れず、国際社会でその責任を果たせていない。又,1次の決定さえも出ていない難民申請者が1,000人余りにのぼっており、その手続きの迅速性、透明性、公正性について国内外から問題提起が続出していた。さらに、難民申請者が最低限の生活を維持するための手段へアクセスできず、難民として認められた者の場合にも難民の地位に関する条約が保障する権利さえも享受することができないなど、難民等の処遇にも多くの問題点が明らかとなっている。
それゆえ、「難民等の地位および処遇に関する法律」を制定し、難民の地位に関する条約など国際法と国内法の調和を試み、難民認定手続きおよび難民等の処遇を具体的に規定することによって、人権先進国に進む礎石を固めようとする。
主要内容
- 「難民」、「難民申請者」,「人道的地位が付与された者」等の概念の定義を明確にすることによって国際法に立脚した難民制度の運営を可能にすること(案 第2条)。
- 国際法に基づいて、例外ないノンルフールマンの原則を明らかにすること。(案 第3条)
- 難民認定手続きへの情報接近性を強化し、難民申請者の在留資格を明確にすること。(案第5条)
- 空港・港湾などでの難民認定の申請手続きを明文化し、難民認定の申請が恣意的な行政によって拒否される状況を防止すること。(案 第6条)
- 難民認定審査の期間を制限し,面接、事実調査、関係機関の協力、弁護人の助力、信頼関係にある者の同席、UNHCRの参加、通訳、難民面接調書の確認、書類などの閲覧、複写権、秘密の保障など手続き的な保障の内容を具体的に明示すること。
- 難民の特殊性に起因する立証責任および立証の程度の緩和の内容を明文化する。難民の立証の程度については,一般民事手続きで要求される蓋然性にはるかに達し得ない「合理的な可能性」というのが一般的な見解であり、これを反映すること。(案 第9条)
- 難民申請者の拘束を制限し、異議申立てにおいても口述意見陳述の機会を保障するなど手続き上の保障を明記すること。
- 人道的地位の付与の手続きも原則的に難民認定手続きを準用するようにすること。(案 第27条)
- 難民の第三国定住について規定し、海外にいる難民に大韓民国への再定住の可能性を付与すること。(案 第28条)
- 異議申立ての決定機関である難民政策審議機関の難民委員会を新設し、独立した異議審査の手続きが進行されるようにすること。(案 第29条)
- 難民の処遇は,基本的に,少なくとも「難民の地位に関する条約」などに規定された権利は保障されるようにすること。(案 第36条)
- 難民の家族統合の保障を明文化し、既に慣行的に実施され、場合によっては保障されなかった家族再統合が法的根拠を持って行われるようにすること。(案 第44条)
- 人道的地位が付与された者は、出入国と関連した部分を除いては難民と同じ処遇を受けられるようにすること。(案 第47条)
- 難民申請者について、生計費支援を原則にし、一定期間が過ぎれば例外的に就労ができるようにすること。(案 第48条)
▲ページトップへ
|
難民などの地位と処遇に関する法律案
第1章 総則
|
第1条【目的】 この法は,難民の地位に関する条約および難民の地位に関する議定書、その他の国際人権条約により,大韓民国で難民の地位の認定および人道的地位の付与手続きならびに難民、人道的地位を付与された者および難民申請者の処遇に関する事項を規定することを目的とする。
第2条【定義)】 この法で使う用語は,次を意味する。
- 1「難民等」とは、難民、人道的地位を付与された者および難民申請者をいう。
- 「難民」とは、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるため、自身の国籍または市民権を持つ国(以下「国籍国」と言う)の外にいる者で、国籍国の保護を受けることができない、またはそのような恐怖を有するために国籍国の保護を受けることを望まない外国籍を持った者、あるいは大韓民国に入国する前に居住した国家(以下「常居所国」と言う)外にいる無国籍者であり、そのような恐怖を有するために常居所国に帰ることができないまたは帰ることを望まない者をいう。
- 「人道的地位が付与された者」とは、第2号の難民の要件を満たさないものの、暴力、外国の侵略、内乱、人権侵害、拷問などの非人道的な取り扱いや罰則または公共の秩序を重大に害するその他の状況によって、自身の国籍国の外にある者として国籍国の保護を受けることが出来ないまたはそのような憂慮によって国籍国の保護を受けることを望まない外国籍を持った者、又は従来の常居所国の外にいる無国籍者としてそのような合理的な憂慮のために常駐国に帰ることができないまたは帰ることを望まない者の地位をいう。
- 「難民申請者」とは、外国籍を持った者または無国籍者として大韓民国に難民の認定を申請した者のうち、次の各目のどれ一つに該当する者をいう。
い 難民認定手続きが継続中である者
ろ 難民認定不許可の決定または不許可決定に対する異議申立ての棄却決定を受け、まだ異議申立て提起期間また不認定処分を取り消す訴訟の提訴期間が過ぎていない者
は 難民認定不許可決定に対する取り消し訴訟が継続中であるかまだ判決が確定されていない者
- 「再定着難民」とは、海外にいる難民の中で、大韓民国への第三国定住が許可された者をいう。
- 「外国人」とは、大韓民国の国籍を持たない者、すなわち外国国籍を持った者および無国籍者をいう。
- 「出身国」とは、外国国籍を持った者の場合にはその国籍国、無国籍者の場合にはその常居所国をいう。
第3条【ノンルフールマン】 難民などに対しては次の各号のどれ一つに該当する国に送還しない。
い 人種、宗教、国籍もしくは特定の社会集団の構成員であることまたは政治的意見見解を理由にその生命または自由が脅威を受ける恐れがある国。
ろ 拷問および非人道的な取り扱いまたは刑罰、あるいは大韓民国が加入した国際条約が明示したこれと類似の他の取り扱いを受ける恐れがある国家。
は 第1号および2号に明示された状況にさらされる恐れがある他の国に移送される可能性がある国家
第4条【法的用例】 難民などの地位と処遇に関して、この法に特別な規定がない事項に対しては「出入国管理法」を準用する。
▲ページトップへ
|
第2章 難民認定手続きなど
|
第5条【難民認定の申請】(1)自ら難民であることを認められることを望む大韓民国の国内にいる外国人は、法務部長官に難民認定を申請することができる。難民の認定を申請しようとする外国人は、難民認定申請書を管轄の出入国管理事務所長(以下「事務所長」という)、管轄出入国管理事務所出張所長(以下「出張所長」という)または外国人保護所 [収容施設] 長に提出しなければならない。
(2)第1項による申請をする場合は、次の各号に該当する書類を提示しなければならない。
- 旅券または外国人登録証。ただし、これを提示できない場合にはその理由書
- 難民認定の決定に関連した書類がある場合はその書類
(3)出入国管理官は、難民認定の申請について問い合わせしたりその意思を明らかにしたりする外国人がいる場合には、これに積極的に協力しなければならない。
(4)法務部長官は、第1項による申請書を受け付けた時には、その申請した者に難民認定審査中である事実を確認する証明書を発給しなければならない。
(5)難民申請者は、「出入国管理法」上の在留資格の有無とは関係なく、難民認定可否の決定が確定するまで(難民認定不許可決定の後、これに対する行政争訟が提起された場合はその手続きが終結する時までを含む)大韓民国に滞留することができる。
第6条【空港・港湾などでの難民認定の申請】 (1)「出入国管理法」によらず、外国人は入国審査の前にも空港・港湾または国境で難民認定の申請ができる。
(2)空港・港湾または国境で難民認定の申請をした者に対しては、4週以内に難民認定に関する決定がある時まで、空港、港湾または国境に留まれるようにしなければならない。
(3)法務部長官は、難民認定申請書が提出された日から4週以内に難民認定に関する決定をするべきで、その期間内に決定ができない場合、入国および臨時滞留を許可しなければならず、通常の難民認定手続きにより審査しなければならない。
(4)空港、港湾または国境での難民申請者に対しは、第2項の期間内は法務部長官が決めるところにより基本的な衣食住を提供しなければならない。
(5)空港、港湾または国境での難民認定手続きは、みた条項の時間的および場所的制約を除いては通常の難民認定手続きに従う。
第7条【難民認定の申請に必要な事項の掲示など】 (1)法務部長官は管轄出入国管理事務所(以下「事務所」という)、管轄出入国管理事務所出張所(以下「出張所」という)または外国人保護所および空港、港湾または国境に難民認定の申請に必要な具備書類、受付機関、処理期間、処理手続き(手続き的保障を含む)、決定基準、その他に必要な事項を掲示(インターネット等を通した掲示を含む)し、またはこれに対する便覧を備えつけるなど、誰でも閲覧できるようにしなければならない。
(2)第1項による掲示などの事項は、外国人が理解できる言語で作成されなければならない。 韓国語、英語、中国語、その他に法務部令が定める言語で作成し、掲示など事項を理解できない外国人が希望する場合には通訳による方法で掲示等の内容を知らせなければならない。
第8条【難民認定の審査】 (1)事務所長・出張所長または外国人保護所長は第5条による申請書を提出された時には遅滞なく難民担当官により難民申請者に対し面接を実施し、申請内容に対する事実調査をした後その結果を添付して、法務部長官に送付しなければならない。難民申請者の要請がある場合は、同性の出入国管理官の面接を実施しなければならない。
(2)法務部長官は、第1項による申請書などを送付された時には法務部内の難民専門担当官の審査を経て、難民認定の申請が正当であるかどうかを決める。
(3)法務部内の難民専門担当官は、難民認定の申請に対する審査、難民認定の基準および手続きに関する情報と出身国または地域の情報の収集および管理、難民担当官に対する教育などを担当する。
第9条【立証責任および立証の程度】 難民申請者は、本人が難民であることを立証しなければならない。ただし、申請人の陳述が偽りだと疑う相当な理由がない限り、その陳述を裏付ける証拠がないという理由で難民認定を拒否してはいけない。
第10条【事実調査】 (1)法務部長官は、第4条による難民の認定または第23条による難民認定の取り消しをすることにおいて必要だとされる時には、法務部内の難民専門担当官または事務所・出張所・外国人保護所の難民担当官にその事実を調査させることができる。
(2)第1項による調査をするために必要な時には、難民の認定を申請した者やその他に関係者を呼んで審問すること、または文書資料の提出を要求することができる。
(3)法務部内の難民専門担当部署の長または事務所長・出張所長または外国人保護所長は、難民専門担当官または難民担当官が第1項により難民の認定または難民認定の取り消しなどに関する事実調査を終えた時には、遅滞なくその内容を法務部長官に報告しなければならない。
第11条【関係諸機関の協力】(1)出入国管理官は、第10条による難民の認定などに関する調査をすることにおいて必要な時には、関係機関または団体に資料の提出または事実の調査などの協力を要請することができる。
(2) 第1項による協力要請を受けた関係機関または団体は、正当な理由なしでこれを拒否してはならない。
第12条【弁護人の助力を受ける権利】 (1)難民申請者は、弁護人の助力を受ける権利を持つ。
(2)難民申請者が貧困またその他の理由で弁護人を選任できない時には、国庫の負担での弁護人の選任を要請することができる。
第13条【信頼関係である者の同席】 法務部長官は、難民申請者の申請がある時には面接に支障を招く恐れがあるなどやむをえない場合でない限り、申請者と信頼関係のある者の同席を許さなければならない。
第14条【通訳】 (1)法務部長官は、難民申請者が韓国語で十分な意思表現をできない場合には、面接などの過程で大統領令で定める一定の資格をそろえた通訳人に通訳させなければならない。
(2)難民申請者は、自費で本人が指定する通訳人に通訳させることができる。
第15条【難民面接調書の確認】 難民専門担当官は、難民面接を終了した後に難民申請者が難民面接調書に記載された内容を読めない場合には、通訳を通じてその難民申請者が理解できる言語でその内容を確認できるようにしなければならない。
第16条【書類などの閲覧・複写】 (1)難民申請者は、本人が法務部長官に提出した資料、難民審査の供述調書、法務部長官が保有しており秘密として分類されない関連国または地域の情報、事実調査の資料などを閲覧・複写することができる。
(2)出入国管理官等は、難民申請者から閲覧・複写の要請がある場合には、遅滞なくこれに応じなければならない。
第17条【申請人などの身元など秘密の保障】 (1)難民認定手続きに関与する公務員は、難民認定の申請をした者と第13条により面接などに同席する者および弁護人の住所・声明・年齢・職業・容貌、その他にその申請人などを特定して把握できる人的事項と写真などを公開したり他人に漏洩したりしてはならない。
(2)何人たりとも第1項による申請人などの人的事項と写真などを申請人などの同意を受けず出版物に掲載したり放送媒体または情報通信網を利用し公開したりしてはならない。
(3)難民認定申請についてのいかなる情報も出身国に提供されてはいけない。
第18条【難民の認定など】 (1)法務部長官は、難民認定の申請が正当と認められる時には、難民として認める決定をし、難民認定証明書を難民申請者に交付する。
(2)法務部長官は、難民認定の申請が正当ではないと認められる時には、難民の認定をしない決定をし、その決定の理由(申請人の実績、法律的主張に対する判断を含む)およびこれに対し30日以内に異議申立てができるという内容を含んだ難民認定不許可の通知書を難民申請者に交付する。
(3)難民認定などの決定は難民認定申請書を受け取った日から6ヶ月以内にしなければならない。ただし、やむをえない事情がある時には、法務部長官は職権で6ヶ月を延長することができる。
(4)第3項端緒により難民認定などの決定期間を延長した時には、その最初6ヶ月の期間が満了する7日前まで難民申請者にこれを通知しなければならない。
(5)第1項および第2項による難民認定証明書および難民認定不許可通知書の交付は、「行政訴訟法」第14条に則る送達の方法でおこなう。ただし、難民申請者が直接に受領する意思を事前に表わした場合には、事務所長・出張所長または保護所長を経て、難民申請者やその代理人に直接に交付しなければならないが、難民申請者の責任ある理由で3ヶ月以内に交付が不可能な場合にはそうでない。
第19条【難民認定の排除】 (1)法務部長官は、難民申請者が難民認定の要件を充足する場合にも、次の各号のどれ一つに該当すると認めるほどの相当な理由がある場合には難民の認定をしないと決めることができる。
- 1. 国連難民機構(UNHCR)の他に国連の他の機構または機関から保護または援助を現在受けている者。ただし、そういう保護または援助を現在受けている者の地位が国際連合総会によって採択された関連決議文により最終的に解決されずそういう保護または援助の付与がいかなる理由で中止される場合である者は、その事実によってこの条約上の利益を与えられる資格がある。
- 当該難民申請者が居住している国家の管轄機関によりその国家の国籍保有に伴う権利と義務を持つとして認められた者。
- 平和に反する犯罪、戦争犯罪、または人道に反する犯罪に関して規定している国際文書で決められた犯罪を起こした者。
- 難民として避難国に入国することが許可される以前にその国の外で重大な非政治的犯罪を起こした者。
- 国際連合の目的と原則に反する行為をした者
(2)法務部長官は、第1項により不許可決定をする場合、その理由と30日以内に異議申立てができるという内容を記載した難民認定申請の不許可決定書を事務所長・出張所長または外国人保護所長を経て申請人に交付しなければならない。
第20条【身元確認のための保護 [収容] 】 (1)出入国管理官は、難民申請者が自分の身元を隠して容易に難民として認められる目的で旅券など身分証をわざと破棄する、または偽りの身分証を行使したことが明白な場合には、その身元を確認するために「出入国管理法」第51条により、事務所長、出張所長または外国人保護所長から保護命令書を発行されその外国人を保護することができる。
(2)第1項により保護された者に対しは、身元が確認されると同時に保護を解除しなければならず、10日以内に身元を確認できない場合には保護の解除しなければならない。ただし、やむをえない事情がある場合には、事務所長、出張所長または外国人保護所長はその保護を10日まで延長することができる。
第21条【保護中の外国人による難民認定の申請】(1)難民申請者が難民認定の申請当時、すでに「出入国管理法」第51条および第63条により保護中である場合には、その保護期間は難民認定の申請をした時から6ヶ月を超過できない。
ただし、1回に限って裁判所の許可を得、その期間を延長することができる。
(2)難民申請者の保護を解除する時には、保証など一定の条件を付加することができる。
第22条【異議申請】 (1)難民認定の申請をしたが第18条第2項または第19条により難民の認められることができない者あるいは第23条により難民認定が取り消しになった者は、その通知を受けた日から30日以内に法務部長官に異議申立てをすることができ、異議申立てに異議の理由を釈明する資料を添付し、事務所長、出張所長または外国人保護所長に提出しなければならない。この場合、「行政審判法」による行政審判を請求できない。
(2)事務所長、出張所長または外国人保護所長は、第1項により異議申立書を提出された時には、意見を付けて遅滞なく法務部長官に送付しなければならない。
(3)法務部長官は、第2項による異議申立書を受け付けた時には、遅滞なくその事件を第29条による難民委員会に回付しなければならない。
(4)難民委員会は、第3項による異議申立て書を受け付けた時には、異議申立てが正当かどうかを審査して決める。
(5)難民委員会は、直接あるいは難民担当官を通じ、事実調査を行う。
(6)異議申請手続きに関しては、第8条から第17条までの規定を準用する。ただし難民申請者が口頭で意見を述べる機会を保証しなければならない。
(7)難民委員会は、第4項による異議申立てが正当だと決めた時には、法務部長官に難民認定証明書を事務所長、出張所長または保護所長をへて申請人に交付するようにし、異議申立てが正当ではないと決めた時には、その理由(申請人の写実的・法律的主張に対する判断を含む)と90日以内に行政訴訟を提起できるという旨を記載した異議申立てに対する決定通知書を法務部長官により事務所長、出張所長または保護所長を通じて申請人に交付しなければならない。
(8)異議申立てに対する決定は、異議申立書を受け付けた日から6ヶ月以内にしなければならない。ただしやむをえない事情がある時には、難民委員会は職権で6ヶ月を延長することができる。
(9)第8項の端緒により異議申立ての審査期間を延長した時には、その期間が満了する7日前まで難民申請者にこれを通知しなければならない。
第23条【難民認定の取り消し】 (1)法務部長官は、難民として認められた者が次の各号に該当する場合には、その難民の認定を取り消すことができる。
- 自発的に国籍国の保護を再び受けている場合
- 国籍を喪失した後、自発的に国籍を回復した場合
- 新しい国籍を取得し、その国籍国の保護を受けている場合
- 迫害を受ける恐れのため居住している国家を離れ、またはその国家の外で滞留していて自発的にその国家に再定着した場合
- 難民認定決定の主な根拠になった理由が消滅し、これ以上国籍国の保護を受けるのを拒否できなくなった場合。ただし、過去の迫害による経験などで難民に国籍国の保護を受けるように求めることが難しい人道的事情がある場合には該当しない。
- 無国籍者で難民として認定されることになった関連理由が消滅したために、従来の常居所国に帰ることができる場合。ただし、難民として従来の常居所国に帰ることを拒否するために過去の迫害から発生した避けられない理由に訴える者は例外とする。
(2)法務部長官は、第1項により難民の認定を取り消した時には、外国人にその理由と30日以内に異議申立てができるという内容の難民認定取消し通知書でその事実を通知しなければならない。
第24条【UNHCR執行委員会の決定】 法務部長官および難民委員会は、難民認定手続きと異議申立て手続きでUNHCR執行委員会の難民の国際的保護に関する決定を尊重しなければならない。
第25条【審理の非公開】 (1)委員会および裁判所は、難民事件を審理することにおいて難民申請者の身元の秘密保障のための決定でこれを公開しないこともある。
(2)難民申請者は、その身元の秘密保持のために、委員会および裁判所に対して審理の非公開を申請することができる。この場合、委員会および裁判所はその許可の有無と手続き進行の方式および場所に関して決定をすることができる。
第26条【法的用例】 (1)難民認定手続きについては、他の法律に特別な規定がある場合を除き、この法の規定に従う。
(2)難民認定手続きに関して、この法に特別な規定がない事項については、「行政訴訟法」および「行政審判法」を準用する。
第27条【人道的地位の付与手続き】 人道的地位の付与手続きは、難民認定手続きを準用する。ただし、難民認定の申請と人道的地位付与の申請は、同時にあるいは選択的に提出されるし、法務部長官は、難民認定の申請だけがある場合にも人道的地位を付与することが適合と判断される場合には、これを付与することができる。
第28条【再定住難民の受け入れ】 法務部長官は、人道的必要と国際協力を考慮し、第三国定住難民に対する受け入れの必要性、規模および出身地域など主要事項に関して、閣僚会議の審議をへて海外難民の国内再定住を許可することができる。
▲ページトップへ
|
第3章 難民委員会
|
第29条【難民委員会の設置および構成】 (1)難民政策および異議申立てについて第31条第1項各号で定めた事項を審議・議決するために、法務部に難民委員会(以下「委員会」という)を置く。
(2)委員会は、委員長1人を含んだ15人以下の委員で構成され、1人以上の委員を常任とする。
第30条【難民委員の任命および資格】 (1)委員は、難民問題に関して専門的な知識と経験があり、かつ難民の人権保障の向上のための業務を公正かつ独立的に遂行できると認められる次に各号のどれ一つに該当する者(以下「民生委員」という)または行政機関の4級以上の公務員または高位の官吏に属する一般職公務員(以下「政府委員」という)の中から法務部長官の推薦で国務総理をへて、大統領が任命する。
- 弁護士の資格がある者
- 「高等教育法」第2条第1号または第3号による学校で法律学などを教える順教授以上の職にあるもしくはあった者
- 行政機関の4級以上公務員または高位の官吏に属する一般職公務員であった者
- その他、上に準ずる難民に関する知識と経験がある者
(2)委員長と常任委員は、委員の中から大統領が任命する。
(3)委員長と常任委員は、政務職とする。
(4)政府委員の数は、民生委員の数を過ぎないようにする。
(5)委員長および委員の任期は3年でして、1次に限って再任することができる。
第31条【委員会の業務】(1)委員会は、次の各号の事項を審議・議決する。
- 難民の認定および支援に関する主要政策
- 難民認定が不許可とされた者および難民認定が取り消された者の異議申立てに関する事項
- 人道的地位の認定が不許可とされた者および人道的地位認定が取り消された者の異議申立て申請に関する事項
- UNHCRとの交流・協力に関する事項
- 法務部長官が難民業務に関連して必要だと認め、難民委員会に回付する事項
- その他に難民人権の保障および向上のために必要だと認められる事項
(2)委員長は、委員会を代表して委員会の業務を総括する。 委員長がやむをえない理由で職務を遂行できない時には、常任委員がその職務を代行する。
(3)委員会は、構成員の過半数の出席と出席委員の過半数の賛成で議決する。
(4)第1項第2号および第3号に関する委員会の決定は、拘束力を持ち、その他の委員会の決定の場合にも国家安全保障、秩序維持または公共福利に危害だと判断されない限り法務部長官はこれを尊重しなければならない。
第32条【難民研究調査官】 (1)委員会に1人以上の難民研究調査官を置くものの、難民研究調査官は法務部の所属でする。
(2)難民研究調査官は、委員長の命を受け、次の事項を処理する。
- 委員会の運営補助
- 難民政策などに対する研究
- 異議申立てに対する調査
- その他の委員会の事務
第33条【諮問機構】 (1)委員会は、その業務遂行に必要な事項の諮問のために諮問機構を置くことができる。
(2)諮問機構の組織と運営に必要な事項は、委員会の規則で定める。
第34条【難民委員会の運営】 難民委員会の運営などに関してその他に必要な事項は、大統領令で定める。
第35条【UNHCRとの交流・協力】 (1)法務部長官および委員会は、UNHCRが難民などに関する次の各号の事項に対しその情報および統計資料を要請する場合、これに協力しなければならない。
- 難民などの状況
- 難民の地位に関する条約および難民の地位に関する議定書の履行状況
- 難民などに関する現行法令と行政規則および将来施行される法令と行政規則
- 難民認定または異議申立て手続き関連書類を検討して法務部長官または難民委員会への意見を提示
(2)法務部長官および委員会は、UNHCRの要請があるか難民申請者の申請がある場合には、UNHCRが次の各号の行為ができるように協力しなければならない。
- 難民申請者との面談
- 難民専門担当官、難民担当官または難民研究調査官の面接過程への参加
- 難民委員会の審議過程への参加
- 難民認定または異議申立て手続きの関連書類の検討および法務部長官または難民委員会に意見提示
(3)法務部長官および難民委員会は、UNHCRが難民の地位に関する条約および難民の地位に関する議定書の履行の有無を監督する任務を円滑に遂行できるように便宜を提供しなければならず、UNHCRと協力し、難民認定および異議申立て手続きに関与する公務員の教育プログラムを開発・実行しなければならない。
(4)委員長は、必要な場合には、UNHCRに難民に関する情報の提供を要請でき、上の機構の専門家が委員会に出席し、意見を提示するように要請することができる。
▲ページトップへ
|
第4章 難民などの処遇
1節 難民の処遇
|
第36条【処遇】 (1)大韓民国で難民として認められ滞留する外国人は、他の法律にもかかわらず、難民の地位に関する条約およびその他に大韓民国が締結・公布した国際人権条約などによる処遇を保証される。
(2)国家および地方自治体は、第1項の目的を達成するために難民に関する政策の樹立、施行、関連法令の改善、関連部署あるいは部署に対する支援、その他に必要な措置をするために努力しなければならない。
第37条【社会保障】 難民と認められた者は、「社会保障基本法」第8条および社会保障に関する他の法律にかかわらず、社会保障については一般の大韓民国国民と同等の処遇を受ける。
第38条【基本的な生活の保障】 難民として認められた者でかつ生活に困難している者については、本人の申請によって「国民基礎生活保障法」第5条および第5条の2にかかわらず、同じ法の第7条から第15条までの規定による保護を受ける。
第39条【医療給与】 難民およびその家族に対しては、「医療給与法」で定める決めるところにより、医療給与を行うことができる。
第40条【教育権など】 (1)未成年で難民として認められた者および難民として認められた者の未成年の子供は、大韓民国の国民と同等な初等・中等教育を受ける権利を持つ。
(2)法務部長官は、難民として認められた者に対し大統領令で定めることにより、彼の年齢・修学能力、その他に教育環境などを考慮し、教育を受けられるように必要な支援ができる。
第41条【社会適応教育など】 (1)法務部長官は、難民と認められた者に大統領令で定めるところにより、大韓民国に定着するのに必要な韓国語教育などの社会適応教育を実施することができる。
(2)法務部長官は、職業訓練を希望する難民として認められた者に対し、大統領令で定めるところにより職業訓練を実施することができる。
第42条【学歴認定】 難民認められた者は、大統領令で定めるところにより、外国で履修した学校教育の程度に相応する学歴を認められる。
第43条【資格認定】 (1)難民として認められた者は、関係法令が決めることにより、外国で取得した資格に相応する資格またはその資格の一部分を認められる。
(2)法務部長官は、大統領令で定めるところにより、難民として認められた者に第1項による資格を認めるために必要な補修教育または再教育を実施することができる。
(3)第1項および第2項を施行するために必要な場合には、大統領令で定めるところにより、資格認定の可否を審査するための委員会を置くことができる。
第44条【難民の家族結合の保障】 (1)法務部長官は、難民として認められた者の配偶者および20才未満の子供に対し、難民の地位を付与することができる。この場合、難民として認められた者の配偶者および20才未満の子供が大韓民国に入国しようとする場合、その家族の統合ができるよう入国を許可しなければならない。
(2)第1項を根拠に難民の地位を認められた配偶者および20才未満の子供は、20才に達しする、難民として認められていた者が死亡する,またはその者と離婚したとしても難民の地位を遺棄しない限りは、その地位は維持される。ただし、難民の地位を遺棄した者がつづけて在留を望む場合は、「出入国管理法」第24条により在留資格変更許可を受けなければならない。
第45条【難民に対する相互主義適用の排除】 難民として認められた者に対しては、他の法律にもかかわらず、相互主義を適用しない。
第46条【帰化】 難民として認められた者で大韓民国に3年以上住所を持ち続ける者は、「国籍法」第5条第1号の要件をそろえなくても帰化許可を受けることができる。
▲ページトップへ
|
第2節 人道的地位を付与された者の処遇
|
第47条【人道的地位を付与された者の処遇】 第27条により在留許可を受けた者の処遇に関しては、難民の処遇に関する第36条から第46条までの規定を準用する。ただし、出入国と関しては大統領令で定めるところにより制限を置くことができる。
▲ページトップへ
|
第3節 難民申請者の処遇
|
第48条【生活費の支援等】 (1)法務部長官は、難民申請者に大統領令で決めることにより、生計費を支援しなければならない。
(2)法務部長官は、難民認定手続きが難民認定の申請日から6ヶ月が過ぎるまでに終了しない場合には、大統領令で定めるところにより就労を許可することができる。
第49条【住居支援】 (1)法務部長官は、難民申請者の難民認定審査が終了する時まで難民申請者が居住できる住居施設を設置・運営しなければならない。ただし、当該の住居施設は、自由な入所と出所が保証される住居施設でなければならない。
(2)住居施設の種類・管理および運営などに関して必要な事項は、大統領令で定める。
第50条【医療支援】 法務部長官は、大統領令で定めるところにより、難民申請者に医療支援ができる。
第51条【教育権】 未成年の難民申請者および難民申請者の未成年子供は、大韓民国の国民と同等な初等・中等教育を受ける権利を持つ。
第52条【教育支援】 法務部長官は、大統領令で定めることにより難民申請者に韓国語およびその他の教育を提供することができる。
付則
本法は、公布の後6ヶ月が経過した日から施行する。
|