6/26世界難民の日関西集会
弁護士 空野佳弘先生の講演内容要約
「日本の難民訴訟の現状」(30年たった日本の難民受け入れ…裁判の事例から)
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難民裁判から見えてくるもの
空野佳弘氏 |
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【ビルマ難民裁判について】
2005年、ビルマ難民マウンマウンさんが大阪高裁で勝訴し、難民認定を得られた。
空野先生はこの訴訟を敗訴した1審の大阪地裁から担当され、敗訴の要因を分析され、また難民本人からの新しい要素を加え、難民の支援者・支援団体の協力もあり、高裁で勝ち取ることができた経緯を述べられた。
それまでの難民訴訟は、地裁判決で勝訴しても国(入管)側が控訴し、高裁で敗訴することが多く、難民認定に結びつかなかった。しかし、マウンマウンさんは全くの逆である。高裁判決は地裁の判決をことごとく覆したものになり、当時としては高裁で認められたのは初めてであった。
(マウンマウンさんについてはこちら)
【その後の難民訴訟】
ビルマ難民は日本の中で最も多く、事例やデータが出そろっている。東京にはビルマ難民の弁護団がある。福岡は最近判決が出るようになり、勝訴が多く出ている。大阪では(マウンマウンさん以外)ほとんどない。
ビルマの中でも、ロヒンギャ民族の裁判が続いている。それ以外はアフリカからの難民の訴訟が多くなっている。しかし、情報が今一つない。
法務省には本国情報があるが、少ししかない。弁護士にも支援が必要である。
訴訟におけるNGOの役目は、当事者が持つ証拠類の翻訳やネットで出ている文書や文献の翻訳などである。
【難民認定上の問題】
入管が行う最初の退去強制手続きでの調書や難民調査官の調書は、その後(不認定後に異議申し立て後の参与員インタビューやその後の裁判)の手続きで矛盾した供述として取り扱われる。また、難民認定に必要な事情聴取がなされていない。
参与員は設置直後は15人ほどだったが、現在は55人態勢である。参与員のメンバーはどういう手続きを経て任命されるのかがわかっていない。現在は検察庁の元トップだった人がやっていて、行政裁判なのに刑事裁判並みに客観的証拠を難民に求める。参与員も含め、難民認定に係る人たちが研修を受けておらず、手続きも不透明だ。
UNHCRの難民認定ハンドブック(リンク先はpdfファイル)とは、難民条約の統一した見解を推し進めるためにUNHCR執行委員会から委託され、UNHCRが作った。その委員会には日本も入っているのに、法務省の見解は「公正なものではなく、拘束力がない」という判断をして、全く準拠していない。たとえば「迫害」という言葉には定義がない。が、日本では「生命の危険と身体の自由がない」と判断している。が、ビルマ・ロヒンギャ難民にはその定義は当てはまらない。
在日ロヒンギャ難民はビルマが第2外国人扱いをして日本からの送還を受け入れない。ビルマ国内のロヒンギャ民族は外国人扱いで生命の危険があるわけではないが、ひとたびビルマを出ると、彼らを受け入れる国がない。こうした「灰色のゲージ」を認めず、難民に立証を求めるのが日本の難民認定制度である。
(要約文責:実行委員会 河原)
資料:
05年8月5日朝日新聞「私の視点」(pdf) 先生の投稿記事
「異議申立手続」(全難連HPへリンク)
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