■期待はずれの実施状況
2005年5月より、いわゆる60日ルールの撤廃、難民審査参与員制度・仮滞在制度の導入などを骨子とする改正入管難民認定法が施行されています。透明性と公平性に大きな期待が寄せられた法改正でしたが、現実には、ビルマ難民申請者が140名以上収容され続けている現状からも明らかなように、とても失望的なものとなっています。具体的には
- 仮滞在が認められていない
- 参与員の人選プロセスが不透明であり、選出された参与員の専門性、公平性に重大な疑義がある
- 否定的な推定により、公平な証拠の採用が行われていない
ことが問題になっています。
その実態については、日本弁護士会のアンケート結果にもよく現れています。
■参院附帯決議「3年後を目途に各種難民制度の検討を行え」
この改正法成立にあたって、参議院は、「仮滞在許可制度、難民認定における不服申立制度等、難民認定に関する各種制度について、その運用状況を勘案しつつ3年後を目途に検討を行うこと」を政府に対して勧告しています。
■国連拷問等禁止委員会「独立した難民審査機関の設立」を勧告
先日発表された最終見解において拷問等禁止委員会は、
- 難民条約3条(「人種、宗教又は出身国による差別なしに条約を適用すること)に適合するものとすること
- 拷問を受けると信ずるに足りる理由がある場合には、その国には送還してはならない旨を明文化すること
- 難民認定についての独立の審査機関を設立するべきこと
- 入管収容施設内の処遇に関する不服を審査する独立機関を速やかに設置すること
- 拘禁期間に上限を設けること
などを勧告しています。
■検証委員会の設立を!
難民鎖国と呼ばれる現状は、制度改正後も変わりません。
国際社会の付託に応え、世界に「人権」のメッセージを発するには、国際的基準に沿った制度の実現が不可欠です。
そのためには、現行の運用を、入国管理局ではなく、難民法の専門家、UNHCRなど外部の機関に検証を委託し、制度改革の提言を求めるべきです。英国で難民認定制度を担当する内務省は、NGOなどからの指摘を受け、現行認定制度の検証をUNHCRに求め、UNHCRの助言をもとに制度改革に取り組んでいます。
アジアにはいまだ、国際的レベルに達した難民認定機関はありません。人権のスタンダードをアジアに確立することが日本の責務ではないでしょうか。
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