トップページ、集会概要のページに行きます 賛同のお願いのページに行きます 資料のページに行きます 実行委員会についてのページに行きます  
 資料目次 過去の集会 難民制度資料集 集会報告 他のイベント案内
集会報告のページ

  集会報告に戻る


 
講演:渡邉彰悟弁護士
  「難民認定実務の現状と課題~1982年施行から32年を経て~」 
要点筆記

講演する渡邉彰悟弁護士 講演「難民認定実務の現状と課題」渡邉彰悟氏

講演 「難民認定実務の現状と課題」(渡邉彰悟氏)

(PDF 20ページ 734KB)
講演する渡邉彰悟弁護士

 日本の難民認定制度は、その認定システムそのものに大きな問題がある。難民認定審査は難民を受入れる仕事に関わるが、それを担当する法務省入国管理局は外国人を入国させないことに関わる出入国管理をメインの仕事としているのであり,ここには内在的・根本的な矛盾がある。
 1982年の制度施行後、2002年の中国瀋陽の日本領事館への脱北者駆込み事件を経て難民制度の改正が議論されるようになり、2005年に施行された入管法改正によって、申請期限60日ルールの廃止、仮滞在許可や異議申立審査での難民審査参与員制度の導入が行われた。2005年の異議審査で15人が難民認定となったのはこのような状況によると思われる。またビルマでの日本人ジャーナリスト射殺事件後、2009年には主にビルマ難民申請者であるが人道的配慮による在留特別許可が500人を超えるということもあった。
 しかし、その後の認定状況は悪化の一途となり、昨年の法務省の1次審査では認定者は3人、異議審査でも3人に過ぎず、しかも法務大臣は参与員が認めた4件7人について、逆転して不認定とするところまできた。国際的な比較を見れば、日本の難民認定率が際立って低いことがわかる。例えば、2012年の1次審査認定率は、日本0.1%であるのに対してイギリスでは3割を超えている。

 日本の難民認定が極端に少ない理由には、次のようなことがあげられる。
 本来、難民認定には裁量の余地はなく要件に該当すれば難民であるというのが基本であるところ、日本では政治的な配慮がされていると考えられること。例えばトルコの少数民族であるクルド人の事例では海外でかなりの人が難民認定されているが、日本では一件も認定されない。難民認定すれば、友好国であるトルコによる迫害を日本が認めたことになるのを配慮しているのではないか。また中国についてもその意向を気にかけるのか、天安門事件の関係者が最高裁まで争い長期間かけてやっと難民として認められたという事例もある。
 審査体制では、1次審査は入管局職員だけによるもので、申請者は通常「迫害の恐れ」などについて客観的証拠を出せる状況にはないところ、供述には信憑性がない,客観的証拠がないということで終わってしまう。不認定理由も極めて簡単にしか書かれていない。また難民審査参与員は法曹関係者、国際関係有識者、学者などから選任されるが、難民認定実務の専門家といえる人はほんのわずかしかいない。3人一組のチームでヒアリングをするが二人が難民と認めなければ認定にはならない。そのうえ法務大臣は参与員意見を受入れず不認定を維持した事例も出てきており,制度の存在意義を根幹から否定するような事態も生まれている。
 難民認定審査基準については、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が各国審査の基準となるべき考え方をまとめたハンドブックやガイドラインを出しているが、法務省はその内容には法的拘束力がないとして適用せず、独自のより厳格な判断を行う。それには、国家以外の主体による迫害の場合において,国が放置・助長しているのではないとして保護が現実に求められる場合であっても認定されない事例や、迫害者から迫害の対象として個別的に把握されていないと要件を加重する事例、そして難民該当性の証明についてUNHCRも含めて難民法の理解では難民の実状を考慮して立証の基準を下げようしているのに,日本では民事訴訟の通常の証明の程度を求めるなどがあげられる。もちろん,疑わしきは申請者の利益にという「灰色の利益」もまったく用いられない。
 また裁判官も難民法に精通しているわけでもなく、難民事例の検討や情報交換をする裁判官の国際組織(IARLJ)に参加している裁判官もいない。

 日本における難民の生活状況は厳しい。難民申請者がその在留資格を有する期間内に入管に出頭して難民申請をする場合などでは、特定活動目的への滞在資格の変更、6ヶ月経過すると就業許可が与えられることもあるものの,他方で非正規滞在者の申請の場合には,仮滞在許可や仮放免のもとで暮らすことになる。しかし,いずれも就業禁止とされ、RHQ(難民事業本部)から支給される保護費は原則的に行政手続中に限られ,その水準は生活保護を下回る低額で、何年もかかる申請活動の間、生活維持は極めて困難と言わざるを得ない。このような状況は申請者の人間としての尊厳を奪うというレベルに達している。
 難民認定されない場合、人道的措置として在留特別許可が与えられることがあるが、難民認定の場合、定住5年の在留資格であるのに対して、在特は1年であり、家族呼び寄せも出来ない。

 このような現状を改善するには、難民認定制度を入国管理局から切り離し、同時にUNHCRが示す基準によることを明確に打ち出す必要がある。また申請者の法的、社会的地位の安定を確保し、難民を受入れるための社会の理解を広げていくことも必要であると考えられる。

(なお、講演後の質疑応答では、不認定処分理由が簡略なため供述調書などを見て処分取消訴訟を提起すること、難民申請者の弁護士費用は「法テラス」の本来的な事業からは外れているため,日弁連からの委託事業ということで法テラスから支給されており,原資は日弁連会員の会費から拠出されていることや,難民も含め複数の分野で委託事業とされているが、難民も含めて本来事業化が必要であるとの説明がなされた)

(文責:アムネスティ日本・大阪難民チーム 川瀬佑治、中村彰)


  集会報告に戻る

ページトップ


主催:2014年世界難民の日関西集会実行委員会


後援:公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本、全国難民弁護団連絡会議    協力:難民ナウ!



問い合わせ、事務局:RAFIQ(在日難民との共生ネットワーク)
大阪府高槻市大手町6-24 FAX:072-684-0231 Mail: rafiqtomodati@yahoo.co.jp

すべてのコンテンツの著作権は当実行委員会とその関係団体にに帰属します