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● 難民定住どう進める 英国にみる先進政策 (08/04/02 朝日新聞)


 戦火や圧政を逃れて外国で暮らす難民を、より安定した先進国などが受け入れる「第三国定住」の政策が、欧米で広がりつつある。難民に門戸を閉ざしてきた日本政府も導入を検討し始めた。従来の難民認定制度との違いは何か、導入に当たっての課題は。先行する英国のケースを参考に探った。

地方へ分散、地域支援

 英中部シェフィールド。昨年11月、ミャンマー(ビルマ)軍事政権の弾圧を逃れ、タイの難民キャンプで23年間を過ごしたカポウ・シーさん(37)にとって、人口53万のこの町が待ちこがれた「安住の地」になった。
 週2万7千円の家賃は政府が負担。妻と週3回、英語の無料講習を受ける。2人の子供は地元の公立学校に通う。ほかに英政府から養育手当など週4万円が支給される。
 銀行口座の開設方法や買い物の仕方などは、英NGO(非政府組織) 「難民評議会」のケースワーカーが手取り足取り教えてくれた。「安全も平等も、子どもの未来もここにはある」とカポウ・シーさんは笑う。
 英国ではこれまで、主に英国入国後に難民申請し、審査を経て認定された難民を受け入れてきた。だが04年、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が進める難民の第三国定住促進策に参加。ケニアに逃れていたエチオピア難民なども含めて年500人ずつを受け入れる。
 再定住先を決める上で政府が留意するのがNGOとの連携と地方への分散だ。首都集中を避け、地方の中核都市に受け入れを要請。シェフィールドには、ミャンマー軍政に抑圧される山岳少数民族カレン族の215人が暮らす。地域が難民定着を支援するNGOを結成し、市民がボランティアとしてかかわる。
地元NGOのクレイグ・バーネット代表は「政府に任せるのではなく、地域が責任と主導権をいかに持つかが大切だ」と語る。
 14万人のミャンマー難民が住むタイなど、紛争地や独裁国周辺では大量の難民流入が深刻な負担になっている。一方、難民や移民に寛容な欧米でも、大量の受け入れは社会不安を生む。過度の負担をかけず受け入れる策として第三国定住が関心を集め、欧米、南米、アフリカの15カ国に計7万人が再定住した。
 オランダは人口に応じた難民の受け入れを地方自治体に義務づけ、ドイツやイタリアでも自治体が重要な役割を果たす。デンマークやスウェーデンでは各自治体が、地域社会になじんでもらうための「処方箋」を難民一人一人を対象に組む。住居提供や言語・職業訓練を自治体が担う国もある。(土佐茂生=ロンドン、望月洋嗣)

【キーワード】第三国定住 紛争や政治的弾圧で周辺国に逃れた人を対象にした再定住制度。UNHCRなどが難民認定し、第三国が独自に面接・選別して受け入れる。

【写真】NGO難民評議会のスタッフ(左端)の訪問を受ける英シェフイールド在住のミャンマー難民トゥク・サー・セイさん(左から2人目)と家族=土佐写す

080402朝日新聞【図】
【図】難民の主な出身国・地域(06年。国連難民高等弁務官事務所〈UNHCR〉調べ)
【図】難民受け入れ主な5カ国と日本
【図】難民認定と第三国定住の流れ
(※ クリックすると別ウインドウで見ることができます)

日本 長期支援態勢に課題

 日本では外務、法務、厚生労働、警察など11省庁が昨年9月に第三国定住についての検討会を発足。先行導入した国が再定住希望者を選ぶ方法や受け入れ態勢などの研究を始めた。
 日本はUNHCRへの拠出額では米国に次ぐ世界2位。だが07年の難民認定数は41人と、他の先進国より極端に少ない。国力に見合った貢献を求める国際社会の圧力は年々強まり、「カネを出せば評価される時代ではなくなった」(法務省幹部)との焦りが出ていた。
 そこで注目するのが、難民を入国前に面接などで選別・把握でき、「国際貢献と治安維持のバランスが取りやすい」(同)とみる第三国定住だ。導入時期はまだ決まっていないが、難民への門戸開放の第一歩になるとして、国連や難民支援団体などは検討会の行方を注視する。
 少子・高齢化で外国人労働力に頼らざるをえなくなりつつある日本社会の構造変化も「追い風」だ。UNHCRの滝沢三郎駐日代表は「山村や島嶼(とうしょ)部など高齢者が住民の大半を占める村が増えており、日本でも地方にこそ難民の受け入れニーズはある」と期待する。
 実は日本には第三国定住の先例がある。70年代から05年まで約1万1千人を受け入れたインドシナ難民だ。その約4割が難民キャンプからの「再定住」だった。
 高学歴を得て活躍した人がいる半面、見切りをつけて欧米に移り住んだ人も少なくない。日本語の集中教育を受けたが、言葉の壁は解消されず、「満足できる職に就けない」との悩みを抱える人は多い。多くのインドシナ難民が再定住した神奈川県大和市のNPO(非営利組織)「かながわ難民定住援助協会」の桜井ひろ子会長は「日本語教育などで長期の支援態勢が必要だ」と話す。
 (塚本和人、市川美亜子)

弱者優先し受け入れを

 欧州の難民政策に詳しい杏林大学の川村真理准教授
 第三国定住は難民問題解決のひとつだが、受け入れ国の事情で選別するのではなく、国際的保護の観点から、迫害を受けるなど弱い立場の人びとを優先すべきだ。このためUNHCRは選別の基準を示し、欧米諸国も同様の基準の法令化に取り組んでいる。(周辺国の)難民キャンプで十分な保護を得られない人こそ率先して受け入れるという姿勢が大切で、国際的な基準を満たした選別の仕組みや態勢が必要だ。再定住にあたっては、住居、言語、職業訓練、医療などでの支援態勢が重要。政府と自治体の連携も欠かせない。市民一人一人が、難民がくぐり抜けてきた痛みに共感し、共生していく意識を持てるかも課題だ。

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