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● なんみんハウス資料室だより (第11~第15号)

「なんみんハウス資料室便り」とは
「なんみんハウス」資料室に所蔵している本、新着本などを室長のnonomarunさんがボチボチと紹介していきます。資料室には、難民認定に向けての実用書類、国際人権法、在住外国人支援のためのガイドブック類、日本語教材のほか、難民・移民・国際関係・国内事情などに関するノンフィクション・フィクション一般書・絵本などなど、あらゆる視点からの書籍や雑誌、報告書や論文類を所蔵していく予定です。
 「あ!これ面白そう!」「他にどんな本があるのかな?」「もう少し詳しく知りたい」「レポート課題があるんだけど…」と思ったら、ぜひぜひ気軽に「なんみんハウス」にお越しください。現在貸し出しは行っておりませんが、資料室で自由に閲覧していただけます(注:講座や会議等使用中は利用できません)。お越しくださるときは事前にご連絡・ご確認ください。

 第11号 長坂道子『難民と生きる』新日本出版社
 第12号 『自分とは違った人たちとどう向き合うか 難民問題から考える』
 第13号 『日英対訳 外国人をサポートするための生活マニュアル 役立つ情報とトラブル解決法 第2版』
 第14号 『アフリカに暮らして ―ガーナ、カメルーンの人と日常』
 第15号 『あなたにもできる外国人へのこころの支援 多文化共生時代のガイドブック』

 第11号 長坂道子『難民と生きる』新日本出版社


なんみんハウス資料室室長nonomarunの星座はオリオン座@今日はエイプリルフールだけど本気だよ。 です。

★先日、梅田シネ・リーブルでフランス映画『未来よ、こんにちは』を観てきました。主人公の女性の凜とした生き方と心意気に共感するとともに、運命や現実を受け入れて、負った傷も含めて自分に正直にしなやかに生きていくのが、本当の強さかもな、と思った室長です。

さて、この主人公は哲学の高校教師なのですが、とにかくどこにもかしこにも本があって、どこでも読んでいるし回りも読んでいるし、もうそういう場面にめっぽう弱い室長(すぐ読書熱が出る)、、、

て話は置いといて。この映画の舞台であるフランスだけでなく、多くのヨーロッパ諸国では哲学を高校の必修科目にしていることは有名ですが、もうその授業風景が!モンテーニュやルソーの精神とか理論を高校生が真剣に討論している(そしてその生徒達は多民族)。
…という教育の素地があってこその、今回ご紹介する「市民教育」なのかな、と思った次第。

 長坂道子『難民と生きる』  新日本出版社、2017年3月

 欧州に長く居住する彼女が、久しぶりに日本に帰国し、「!?」と思ったこと。例えば、大荷物をもっている老婦人を助けようと、あるいはベビーカーと四苦八苦している若いお母さんを助けようと声をかけたら、慌てて断られてしまったこと。周りの通行人は全く彼女らを無視して通り過ぎていく。困っている人に手を貸すことも、また貸されることにも不慣れな日本社会。

 日本社会は、家族・地域コミュニティなど自分が所属する身近なところでは人に優しく親切ですが、赤の他人には驚くほど不親切で冷淡だと、室長も海外から帰るたびに思います(赤の他人でも、それが消費者となれば親切かも)。貧乏な人を税金を使ってまで助ける必要はない、社会的弱者は自己責任。だからこそ、子どもの時から社会の「勝ち組」になるように育て上げる(何が「勝ち組」なのかもわからないまま)。

 では難民が百万単位で押し寄せている欧州はどうなのか? 確かに難民排斥の政策も執られつつあるけれど、筆者の感覚では、各国間にかなりの差があるにしても、一般の人々の意識の中ではこの「難民問題」は日常的なイシュー(課題)として定着しているそうです。その典型的な姿が、自宅に無償で難民を泊め、一緒に生活する人々。混雑した場でベビーカーを押す女性を「迷惑」と捉える社会と、見も知らぬ難民を自宅に迎え入れることも厭わない社会。「他者への態度」における彼我のこの違いはどこから来るのだろう?というのが、著者の最初の疑問でした。

 そこから「難民と生きる」一般のドイツ人たちと、難民をインタビューし、生の声を収録したのが本書です。彼らと共に暮らし、難民申請を手伝ったりドイツ語を教えたり、喧嘩したり一緒に笑ったりして自立支援をしているうちに、「難民」が「マフメド」「ウルスラ」という個人の顔に、友人の顔に変わっていく。しかも彼らには、路上に寝ている難民を泊めてあげた、という単純で当然のことをしたという意識と「無理をしていない」という態度。例えば、難民と猫を留守番に残して、バカンスに何週間も行ってしまう(笑)。そして支援という一方通行ではなく、自らも一緒に成長していることを実感し、お互いがこの出会いに感謝して、それぞれの人生を歩んでいく社会。

 こうした事例を通じて、著者は最初の疑問に対する答えの一つとして、「市民教育」を挙げます。市民教育とは愛国教育ではなく、「自分が社会の構成員であり、人権を享受する権利とともに、他者のものも含めてそれを擁護する義務を負うものであることを理解させるような教育。

 民主主義の良い点と脆弱な点を学ばせ、過去の悲劇を再び繰り返さないためにはいかに市民一人一人の意識が必要であるかを考えさえる教育。国と国の境が何度も書き換えられたヨーロッパという土地で、なんとか平和を維持していくための協調や妥協や交渉や工夫、その具現としてのEUの理念や歴史的背景と同時に、その矛盾や問題点をも学ばせ、議論させる教育」(207~208頁)。

 2016年末のベルリン・クリスマス・マーケットでのトラックテロ事件のあとも、人々はそこに行き続けたし、当局も禁止や制限もせず難民排除の空気が一気に膨らまなかったことに、ドイツ市民の意地と希望をみたと著者はいいます。そして「難民を支援すること」と「(自分の)日々の享楽という自由社会の宝への愛着を持ち続け、それを死守しようとし続けること。それは共に自由で寛容な世界への希求の表れであり、地続きの一貫した態度」なのだと。

(17/4/1 発行)

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 第12号 『自分とは違った人たちとどう向き合うか 難民問題から考える』


なんみんハウス資料室室長nonomarun@なんと!前号は4月1日発行であった!という驚愕の事実が発覚!! です。

★4月もあっという間…きっと5月もあっという間…。いやいや、毎日が充実すぎたってことで!忘れられないように、発信がんばりまする!乞うご期待!

★先日、シネ・リーブル梅田で、映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』を観てきました。イギリスの貧困や格差社会については、ブレイディみかこさんの著作などで知っていたけど、こうして目の当たりにすると絶句。そしてダニエルが書き記した言葉が、そのまま日本にいる難民に当てはまり、気持ちがぐーーーっときて哀しくなってしまいました。ちょうど難民不認定取り消し裁判の傍聴の帰りだったので、さらに…(T_T)
 ダニエルがしたことを、私も同じ状況にいたら、他の人にできるのだろうか?と自問しながらの帰り道、空を見上げると星がとても綺麗でした。

 ジグムント・バウマン(伊藤茂訳)『自分とは違った人たちとどう向き合うか 難民問題から考える』
 青土社、2017年2月

第1章 移民パニックとその利用(悪用)
第2章 避難所を求めて浮遊する難民たち
第3章 強い男(女)が指し示す道について
第4章 過密状態をともに生きるための方策
第5章 面倒で、イライラさせて、不必要な、入場資格を持たない人々
第6章 憎悪の人類学的ルーツVS時間拘束的ルーツ

訳者あとがき ―解説も含めて
人名索引

 著者はポーランドのユダヤ人家庭に生まれ、冷戦時代にワルシャワ大学の職を追われイギリスに移住した経歴の持ち主(イギリスのリーズ大学名誉教授)。本書の移民・難民のテーマについては、こうした彼の個人的経験が大きく関連していると思われます。

 薄い本で読みやすいのですが、少し議論が込み入る部分もあり、訳者あとがき(解説)に、各章の内容とポイントがわかりやすくまとめてあるので、まずこの部分を先に読むことをおすすめします。ここでもそれに沿って、nonomarun室長が、特に日本社会と強く関わると思った第1章と第2章をご紹介します。

 第1章では、日本でも衝撃が走った浜辺に打ち上げられた難民の遺体の映像にように、連日彼らの悲劇がマスコミによって流されて世間は同情のパニック状態になるも、それは一時的でやがて沈静化して見慣れた日常のひとこまとなり「無関心化」へと向かうメカニズムと、そこから世界的規模の根本的解決策を練られないままになっていく「道徳的中立化」についての警鐘。また悲惨な状況下にある難民の姿が、国内の不遇な人々にとって「下には下がいる」という安心感や不満の解消、自尊心の回復にも繋がること、しかしその姿は「悪い知らせをもたらす使者」として非難や排斥・処罰対象にされてしまうという奇妙な社会心理学的な機制に触れています。この部分は、震災や福島原発問題と繋がり、考えさせられました。

 第2章も、日本社会にも大いに関係する、最近政治家やメディアが頻用する「安全保障化」。難民の悲惨な実態や難民問題を引き起こしているグローバルな要因からは目をそらせ、難民に混じった一握りのテロリスト(主に中東出身者)への対策と国内の治安・安全対策へと問題を収束・矮小化させる動き。こうした強行策を主張する政治指導者の支持率は高まり、また難民の悲劇に関心を寄せない一般市民の道徳的後ろめたさも和らぎ解消される効果があるがゆえに、この言葉はいっそう多用されていく。

 6月20日の「世界難民の日」にあわせて、RAFIQでも主催イベント(7月2日)を企画していますが、今年のテーマは「日本で何ができる? 世界が揺れる難民問題」。世界がこんな揺れているときだからこそ、難民の状況をみることで世界の様々な根源的な問題が見えてくるのでは? 難民問題を通じて様々な問題を顕在化しよう、意識しよう、行動しよう!という気持ちが込められています。

 本書でも難民・移民に光を当てることによって、政治家のみならず一般の人々の心理的メカニズムや社会要因が鮮明になっています。難民・移民問題だけでなく2050年には世界人口は100億を超すと言われているこの世界で、私たちはどのような共生社会(あるいは共生しない社会)を目指すのでしょうか?

(17/4/24 発行)

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 第13号 『日英対訳 外国人をサポートするための生活マニュアル 役立つ情報とトラブル解決法 第2版』


お休みはいかがお過ごしでしたか? なんみんハウス資料室室長nonomarun@オトナな深夜便です。

★今宵は、様々な人びとと寄り添うべくの、一冊を。
RAFIQにはたくさんのヘルプ&相談が寄せられている毎日ですが、その際に参考にもしています。そして日本社会で暮らしながら、え?そうだったの??日本で暮らすってこんな大変なんだ!と教えてくれる、この一冊。

★第三版は2016年5月発行ですが、Kindle版のみなので、2版を資料室棚に入れています。

 移住労働者と連帯する全国ネットワーク編
 『日英対訳 外国人をサポートするための生活マニュアル 役立つ情報とトラブル解決法 第2版』

 スリーエーネットワーク、2010年12月

第1章 入国と入管の手続き:
 1入国と在留資格
 2更新・変更・再入国
 3永住許可申請
 4家族の呼び寄せ
 5在留特別許可
 6非正規滞在(オーバーステイ)後の帰国と再入国
 7難民認定

第2章 労働:
 1働き始めるとき
 2賃金について
 3労働時間と休日・休暇
 4仕事が原因で病気やけがをしたら
 5解雇・退職
 6女性労働者の保護
 7労働組合への加入・結成
 8税金
 9新たな技能実習制度

第3章 結婚・妊娠・出産・母子保健・離婚:
 1外国籍の方が日本で法的に結婚する場合
 2妊娠
 3出産
 4母子保健
 5離婚
 6夫・恋人からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)

第4章 医療と福祉:
 1社会保険
 2保険のない人の医療について
 3生活保護制度
 4子どもの福祉・児童手当
 5ひとり親になったら
 6難病患者の医療費助成
第5章 子ども:
 1子どもの国籍
 2子どもの教育
 3在留資格のない子どもの支援
第6章 その他:
 1運転免許
 2交通事故
 3事件に巻き込まれたら
 4死亡に伴う手続き

外国人が日本に入国あるいは在住するにあたってのマニュアルです。特に難民に関するところは、第1章。でも、それ以外でも日本人だと当事者あるいは関係者になってから初めて調べて知る、ということが多いので、読むだけでもとても勉強になります。事務的な手続きだけでなく、現状はこんな例もあった、役所にはこういう言い方をした方がよい、こういうことを入管や警察に言われることが多いが審査には則していないので全く気にする必要はない、など、外国人が感じる不安を払拭し寄り添うべく、細かいアドバイスが。日英対訳です。

(17/5/9 発行)

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 第14号 『アフリカに暮らして ―ガーナ、カメルーンの人と日常』


なんみんハウス資料室室長nonomarun@今日はなんと資料室から初実況中継だよ! です。

★今回ご紹介する本は、アフリカの文化がわかる(ガーナ、カメルーン)一冊。日本人にとってはとても遠い大陸ということもあって、ボンヤリとしか知らない、あるいは知っていることがほとんど更新していかない場所の一つではないでしょうか。

 多摩アフリカセンター、少年ケニアの友東京支部共編『アフリカに暮らして ―ガーナ、カメルーンの人と日常』
 春風社、2012年8月

 前半の「ガーナより愛を込めて」では、ガーナ長期滞在の専門家達による、ガーナについての豆知識的なルポ。ガーナ大学農学部、太鼓、ハイライフ、フーフー(ガーナのごはん)、映画、FMラジオ、サッカー、奴隷貿易、野口記念医学研究所などなど、様々な角度からガーナの日常を知ることができます。

 後半の「カメルーン民衆生活史」では、文化人類学者の和崎春日氏によるカメルーンでの長年の密着現地物語(ついには王に認められて、その王子にまでなってしまった!)。
(17/5/12 発行)

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 第15号 『あなたにもできる外国人へのこころの支援 多文化共生時代のガイドブック』


みなさん、こんばんは。
なんみんハウス資料室室長のnonomarun@今夜の月は「ストロベリー・ムーン」なんですって!

★「“strong mind”が大事なんだ」― 難民不認定取り消しの裁判準備を迎える難民Bさんに、大先輩難民Aさんがアドバイス。ハウスのキッチンでお茶碗を洗っていた室長が、その言葉に思わず振り向くと、それまで下を向いていたBさんと目があいました。(そうだよ)という気持ちでにっこり笑いかけたら、Bさんも(そうだね)という顔でニッコリ。5秒ぐらいのことだけれど、室長はその時のことをずっと忘れないと思います。時々自分が「支援って何だろう、自分にできることってなんだろう?」って、迷った時に想い出したりして。

 野田文隆・秋山剛編著、多文化間精神医学会監修
 『あなたにもできる外国人へのこころの支援 多文化共生時代のガイドブック』
 岩崎学術出版社、2016年9月

はじめに
パートI 知ってほしい:外国人へのこころの支援のイロハ
パートII 立場で違うこころの問題(1)
     1 本人の場合
     2 配偶者の場合
     3 児童の場合
パートIII 立場で違うこころの問題(2)
     1 留学生では
     2 難民・難民申請者では
     3 外国人労働者では
     4 国際結婚では
     5 中国語精神科専門外来では
パートIV こころの支援者や団体を活用するコツ
     1 国際交流協会と連携する
     2 スクールカウンセラーを利用する
     3 医療通訳を使う
     4 保健師に相談する
     5 精神保険福祉士に相談する
     6 心理士に相談する
     7 精神科医に相談する
パートV 医療現場で実際に起こること
パートVI 文化的背景を知らないと困ること
付録 役に立つ相談先
おわりに

 ここでは難民・難民申請者の場合をご紹介します。彼らの発症のストレス要因は、
 1)難民化以前に生じている問題
 2)難民化中に生じている問題
 3)難民化後(受入国)での問題

と大きく3つに分けられますが、ここでは3)の受入国での問題を以下に書き記してみます。

 この場合、7つの要因が挙げられます、
1. 移住に伴う社会的・経済的地位の低下
2. 移住した国の言葉が話せないこと
3. 家族離散もしくは家族からの別離
4. 受入国の友好的態度の欠如
5. 同じ文化圏の人々に接触できないこと(補足:迫害や密告の恐れなどから)
6. 移住に先立つ心傷体験もしくは持続したストレス
7. 老齢期と青春期世代

 さらに難民申請者は、審査では(および裁判でも)トラウマ体験を何回も話さなければならない、いつ認められるか先がわからない、希望をもてない、他国に難民として行きたいが無理であるという状況も加わり、母国で受けたトラウマとホスト国での過酷な扱いによる二重の精神的負担を負いながら、ひたすら難民認定申請の判定を待っています。「自分で自分を励ましながら生活している」と本節でも表現していますが、まさにそれを目の当たりにします。ましてや「ホスト国」が難民鎖国の日本である場合、さらに入管管理局に長期収容されている場合などは、さらに精神状態は過酷になっていく。

 もちろん臨床経験や専門的知識のない一般の私たちには、彼らの心に医療行為として接することはできないし、安易な言動は危険であるのかもしれません。ただ、本書の最後にある、Cultural Competence(多文化対応能力)を高めるというのは、きっと誰にでもできる。彼らには、民族的背景の差異、出身地・年齢・人生の経験など、人間的多様性が存在します。
 まずそれを理解するために、

 1. 文化的感受性を鋭くすること
 2. 文化的な知識を得ること
 3. 文化的共感性の強化
 4. 文化的に妥当な関係と相互作用を調整すること
 5. 文化的に適切なテクニックを実行すること。

 すなわち「コミュニティにおいて、難民・難民認定申請者の語りを受け止める力こそが、Cultural Competence」なのです。
 翻って私たち自身をみるに、私たちにも様々なルーツ、人生経験、人間的多様性が存在します。つまりその部分は世界共通。まず「人」として最初に繋がれたら…、毎日「自分で自分を励ましながら生活している」のは、あらゆる意味では私たちも同じなのかもしれないし、だから、「明日もまたがんばろう」っていう気持ちに、ゆるやかに寄り添いあえたらな…と室長は日々、月を見ながら思うのです。皆さんはどう思いますか?

(17/6/9 発行)

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