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● なんみんハウス資料室だより (第6~第10号)

「なんみんハウス資料室便り」とは
「なんみんハウス」資料室に所蔵している本、新着本などを室長のnonomarunさんがボチボチと紹介していきます。資料室には、難民認定に向けての実用書類、国際人権法、在住外国人支援のためのガイドブック類、日本語教材のほか、難民・移民・国際関係・国内事情などに関するノンフィクション・フィクション一般書・絵本などなど、あらゆる視点からの書籍や雑誌、報告書や論文類を所蔵していく予定です。
 「あ!これ面白そう!」「他にどんな本があるのかな?」「もう少し詳しく知りたい」「レポート課題があるんだけど…」と思ったら、ぜひぜひ気軽に「なんみんハウス」にお越しください。現在貸し出しは行っておりませんが、資料室で自由に閲覧していただけます(注:講座や会議等使用中は利用できません)。お越しくださるときは事前にご連絡・ご確認ください。

第6号 『アイデンティティと暴力 運命は幻想である』
第7号 『フージーズ 難民の少年サッカーチームと小さな町の物語』
第8号 『地球を「売り物」にする人たち 異常気象がもたらす不都合な「現実」』
第9号 『知っていますか?日本の難民問題 一問一答』
第10号 『だまされるな!技能実習生 国家のサギに』

 第6号 『アイデンティティと暴力 運命は幻想である』


なんみんハウス資料室室長nonomarun@まだ花粉症発症してないから(ドヤ顔)、春が待ち遠しいよ♪ です。

今日はノーベル経済学賞やインド最高位の「ブラト・ラトナ賞」を受賞している著名な学者アマルティナ・センの著書を紹介します。

そもそも「アイデンティティとは複数である」と捕らえ直すことによって、他者と繋がる要素はたくさんでてくるはず。難民を発生させている紛争の根本的問題についてもクリアになり、また彼らと自分の共通点を見いだすことも、より容易になるのではないでしょうか? ぜひ資料室で手に取ってみてください!

 アマルティア・セン(大門毅監訳、東郷えりか訳)『アイデンティティと暴力 運命は幻想である』
 勁草書房、2011年

 プロローグ
 まえがき
第1章 幻想の暴力
第2章 アイデンティティを理解する
第3章 文明による封じ込め
第4章 宗教的帰属とイスラム教徒の歴史
第5章 西洋と反西洋
第6章 文化と囚われ
第7章 グローバル化と庶民の声
第8章 多文化主義と自由
第9章 考える自由


 あなたのアイデンティティは何か?と問われたら、なんと答えますか?すぐさま国籍や民族を無自覚にあげる人が大半ではないでしょうか。著者が繰り返し警鐘を鳴らしているのは、まさにそこなのです。

 アイデンティティが一つに固定すると、あるいは唯一のアイデンティティ(特に顕著なのが宗教・民族・国籍・性別・言語)が押しつけられると、人は簡単に好戦的となり暴力へと走り、世界中のほとんどの紛争、政治的対立、暴力事件はこれが原因である。その背景には、世界の人々はなんらかの包括的で単一の区分法によってのみ、分類できるという偏った思い込みがある—。しかし、あなたのアイデンティティはそれだけで成り立っているわけではありません。 

 例えば著者は自らを「アジア人であるのと同時に、インド国民であり、バングラデシュの祖先をもつベンガル人でもあり、アメリカもしくはイギリスの居住者でもあり、経済学者でもあれば、哲学もかじっているし、物書きで、サンスクリット研究者で、世俗主義と民主主義の熱心な信奉者であり、男であり、フェミニストでもあり、異性愛者だが同性愛者の権利は養護しており、非宗教的な生活を送っているがヒンドゥーの家系出身で、バラモンではなく、来世も前世も信じていない」、そしてこれら全てが自分のアイデンティティの一部を形成しているのだ、といいます。つまり、一人の人間が同時に所属するすべての集合体それぞれが、彼に特定のアイデンティティを与えているのです。

 どうでしょうか?ご自分でも一度挙げてみてください。きっともう、書ききれないほど、あれやこれやとでてくるのでは?(そのリスト、室長のと照らし合わせてみませんか?笑)

 さらにアイデンティティとは、「単一的(文化や宗教)に拘束されるのではなく、複数のアイデンティティのなかから個人が理性により「選び抜く」もの」だと。つまり、個人のアイデンティティが「社会化」すると、時に、集団レベルでの対立・紛争を誘発するゆえに、集団心理に惑わされない「個人」による理性的な判断が要請されるのです。

 最後に、いま声高に理想の社会の形として提唱され推進されている「多文化主義社会」とは、実はそれは「複数単一文化主義社会」なのではないか?結局は文化や伝統は一つに固定できるという、これもまたアイデンティティと繋がる固定化ではないか?(→それがまた・・・と初めの主旨に戻る)という指摘も目から鱗です。 このように、いまや常識とされている定義あるいは認識に、今一度立ち返えることによって、複雑な問題が絡み合い混然として解決の方法も見いだせないような現代社会において、人としての根本的な軸そのものを捕らえ直すことができます(こういう、水をピュッとかけられてハッとさせられる考察が室長は大好き!)。

(2017/3/9発行)

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 第7号 『フージーズ 難民の少年サッカーチームと小さな町の物語』


なんみんハウス資料室室長のnonomarun@今日は暖かいね!何か新しいこと、始めたくなるねっ!! です。

今日はアメリカに第三国定住した人々と、小さなアメリカの街の住民とのルポをご紹介します。

 いまトランプ政策で揺れに揺れているアメリカ政治と社会。だけど、一般の人々の人生や日常生活は同時進行で進んでいる。

 難民が新しい国にきて、地域住民と実際にどのように共生していくのか、あるいは受け入れ側は…?ということが、あるサッカーチームを通してみえてきます。サッカーチームの根底に流れているのは、難民だとか多文化とかというより前に、人として対等に接する(当たり前のことだけど)ということかもしれません。それを可能にするのが、少年たちそれぞれのサッカーへの情熱です。
 ぜひ、手に取ってみて!!

 ウォーレン・セント・ジョン(北田絵里子訳)『フージーズ 難民の少年サッカーチームと小さな町の物語』
 英治出版、2010年3月

 アメリカ・ジョージア州クラークストン。人々がある日ふと気がついてみると、この小さな街に世界各国から第三国定住による難民が大量に押し寄せていました。少数派となることへの恐れや危機感から、難民を排除したがる住民や市長と行政組織。一方で、少数ですが彼らに心を寄せ支援しようとする人々。そんななか、この街に少年サッカーチーム「フージーズ」が誕生しました。少年達は生まれも人種も言語も異なります。イラク・コソボ・リベリア・スーダン・コンゴ・ボスニア・アフガニスタン・ガンビア…etc。彼らのたった一つの共通点は「難民」であること。そしてフージーズの創設者であり無償でコーチをつとめるルーマは、故郷と家族と断絶しヨルダンから移民してきたムスリム女性。すべてが異質であるこのサッカーチームは、難民ならではの紛争地脱出におけるトラウマや恐怖、家族・故郷との別れ、家庭の貧困や学校教育からの脱落だけでなく、思春期特有の問題も次々と発生します。しかしルーマは彼らにチームの規則を厳守することを一貫して要求します。それは、ルール・礼儀を守ること、厳しい練習に耐えること、そしてサッカーへの絶対的な愛情です。

 練習場への妨害や住民達の偏見と排斥、言葉もわからず授業から脱落していき非行に走る少年達、崩壊していく難民家庭を、陰日向で精力的に支えながら、ルーマの厳しいサッカー指導は続き、反発していた少年達も、徐々に唯一の共通言語である英語を身につけ、チームが一丸となってシーズンの勝利へと駆け上っていきます。このように書くと、よくある青春物語のように見えますが、第三国定住・再定住や社会統合の難しさが、サッカーという身近なsportsを通じて浮き彫りにされることで、私たちにより具体的にイメージできます。著者は、『ニューヨーク・タイムズ』の記者で、多数の論文を引用し、また難民の少年達の故郷から脱出してきた事例と社会背景も丹念に取材しており、難民ひとりひとりの物語を積み重ねつつ、フージーズの誕生から成長まで追っている渾身のルポタージュです。
 読みながら、あなたも時折きっと叫んでしまうはず。「ゴー!フージーズ!ゴー!」

(17/3/20発行)

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 第8号 『地球を「売り物」にする人たち 異常気象がもたらす不都合な「現実」』


なんみんハウス資料室室長のnonomarun@二日連続の資料室だより発行は初めてよ。やればできるコなんだから! です。

なんみんハウス資料室の本に、事務所お当番ボランティアの方々が所蔵印を捺してくれました!なんみんハウスのロゴで作ったかわゆい判子を空色インクで。数冊ほど「あれっ 逆さまに捺してある!」てのもありますが、それは、別の日に鼻歌歌いながらテキトーに捺してた時に発生した事件で、犯人は室長です。てへ。レア物だから、是非見つけてみてね(^◇^;)

 マッケンジー・ファンク(柴田浩之訳)『地球を「売り物」にする人たち 異常気象がもたらす不都合な「現実」』
 ダイヤモンド社、2016年3月

プロローグ ―気候変動に「投資」する人たち
第1章 コールドラッシュ ―カナダ、北西航路を防衛す
第2章 シェルが描く2つのシナリオ ―気候変動を確信した石油会社は何を目指すのか
第3章 独立国家「グリーンランド」の誕生は近い ―解けるほどに湧き出す請求、露出するレアメタル
第4章 雪解けのアルプスをイスラエルが救う ―人工雪と淡水化というおいしいマーケット
第5章 災害で利を得る保険ビジネスの実態 ―保険会社AIGと契約する民間消防士
第6章 水はカネのあるほうへ流れる ―投機対象になった「次世紀の石油」
第7章 農地強奪 ―ウォール街のハゲタカ、南スーダンへ
第8章 「環境移民」という未来への課題 ―「緑の長城」が防ぐのは砂漠化か、それとも移民か
第9章 肥沃な土地に「逆流」する脅威 ―バングラデシュからインドへの移民が後を絶たない理由
第10章 護岸壁、販売中 ―オランダが海面上昇を歓迎する理由
第11章 地球温暖化の遺伝学 ―デング熱の再来で盛り上がるバイオ産業
第12章 テクノロジーですべて問題解決 ―気候工学信奉者たちの楽観的な未来
エピローグ ―気候変動に関する、もっともつらい真実


 地球が壊れれば壊れるほど儲かる地球温暖化ビジネスの実態。章立てをみただけで、もう気持ちがどんより暗くなるけど、ああ、人類ってそうだろうな、もう巨大利権の前に滅びるしかないわ…という諦めの溜息もでてしまう、この現実世界。今の難民危機に対してさえ、世界中が足並み揃わず右往左往している状態で、しかも政治的迫害じゃないと、明白な証拠がないと難民じゃないし!とかなんとか、私たちの国が、どーたらこーたらと、すんごい重箱の隅つつくような細かい「いちゃもん」で難民認定すらしない間に、すでに世界中のあらゆる場所で「環境難民(移民)」「気候変動難民」という新しい概念の難民が急増しつつあるのです。

 けれどもその原因となっている背後には、豊かな先進国で暮らしている私たちの無自覚な強欲や消費爆発があることも思い知らされます。自分自身の消費形態や意識も考えさせられる一冊です。アフリカから地中海を渡って、イタリアのマルタ島にたどり着き、収容所に長期監禁されている難民の実態については、第8章を読んでみてください。

(17/3/21発行)

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 第9号 『知っていますか?日本の難民問題 一問一答』


なんみんハウス資料室室長nonomarun@ えっ!三日連続発信て!蝋燭は燃え尽きる前が一番輝くっていうけど、大丈夫っ!? です。

今回は、皆さんの基本的な疑問にサクッと答えてくれる図書をご紹介します。2004年発行なので、データ自体は古く、また今の国際状況は反映されていませんが、日本に関してはほとんど変わっていません(まったく、もー)。「こんな初歩的なこと、聞いてもいいのかしらん…」と躊躇するアナタ!「RAFIQの初級講座受けたのに、なんか基本的なこと忘れちゃったよね、あの講師の先生にとてもいまさら聞けないわ、怖っ!」というアナタ!大丈夫、このQ&Aが助けてくれます。資料室でコッソリこの本に手を伸ばしましょう。

というわけで、今回はズラっと問いのみを羅列してみました。あ、ワタシの質問がここに…と思ったら、是非手に取ってみてね!

 アムネスティ・インターナショナル日本(難民チーム)編著『知っていますか?日本の難民問題 一問一答』
 解放出版社、2004年10月

はじめに 難民一人ひとりの人権を守る
問1 難民ってどういう人たちですか?
問2 どんなことが理由で難民になるんですか?
問3 難民がたくさんいる国はどこですか?
 コラム1 世界難民の日 ― 六月二〇日
問4 難民と移民はどう違いますか?
問5 難民と「不法滞在者」は違うのですか?
問6 中国の日本大使館や日本人学校に駆け込んだ北朝鮮の人たちは、難民ですか?
問7 難民は日本にもいるのですか? 事例紹介1
問8 難民はなぜ日本を選び、どんな状態で来るのですか?
 コラム2 とりあえず生活できる施設はある?
問9  難民を保護する法律は日本にありますか?
問10 難民認定について教えてください 事例紹介2
問11 難民申請している間の生活はどのようなものですか?
問12 日本に難民として来た人は全員、日本で暮らせますか?
問13 難民と認められると、どんな支援を受けられますか?
問14 申請が却下された難民申請者はどうなりますか? 事例紹介3
問15 どうして収容されてしまうのですか?収容されるとどんな生活を送るのですか?
 コラム3 難民申請者の「収容」について ―日本における実態
問16 強制送還されたら、難民申請者はどうなりますか?
問17 日本で暮らしている難民の人たちが一番困っていることは何ですか?
問18 日本で暮らす難民の人たちはどのように暮らしていますか?
問19 外国ではどのように難民を受け入れていますか?
問20 難民問題を解決するにはどうしたらよいですか?
問21 難民問題に取り組む国連の動きはありますか?
 コラム4 アムネスティ・インターナショナルの難民支援活動
問22 難民の人たち(の生活)を助けるために私たちにできることはありますか?
問23 難民問題への理解を深めるために、教育現場での取り組みはありますか?
 コラム5 教育現場での取り組み
問24 日本で国内難民支援をしているNGOは?
もっと詳しく知りたい人に

(17/3/22発行)

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 第10号 『だまされるな!技能実習生 国家のサギに』


こんにちは。なんみんハウス資料室室長nonomarunです。

もう3月も終わり。ひゃ〜早い!! そしてバタバタの4月がやってきます。春とはいえ、寒暖の差が激しい季節。そして新生活が始まって緊張や不安、ストレスいっぱいの人もいるだろうけど、同じくらい新しい出会いや期待とドキドキもたくさんある季節。そんないろんな気持ちが空中に満ちているように感じます。とにかく、体調管理に気をつけて!

今日ご紹介するのはDVD。山村淳平氏は2017年1月に神奈川県弁護士会の人権賞を受賞され、その副賞の一部を制作費にあてて作られたのが、このDVDです(ご本人から寄贈していただきました)。貸出・上映は自由とのことなので、ご覧になりたい方は、ぜひ、なんみんハウスへ!山村氏の他のDVD・書籍もRAFIQで販売しています。

もう少し詳しく知りたい方は、なんみんハウス資料室所蔵の関連本3冊をご紹介します。
  出井康博『ルポ ニッポン絶望工場』講談社+α新書、2016年7月
  安田浩一『ルポ 差別と貧困の外国労働者』光文社新書、2010年6月
  宮島喬・鈴木江理子『岩波ブックレット916 外国人労働者受け入れを問う』2014年12月

 制作・編集:山村淳平、在日ビルマ市民労働組合『だまされるな!技能実習生 国家のサギに』
 (DVD カラー約16分)2017年 ★音声:日本語・ビルマ語

 日本には約1万6000人のビルマ人が在住していますが、近年深刻な問題となっているのが、日本に来た実習生達に対する日本の中小企業による、人権を完全に無視した搾取労働。現代の奴隷制度とまでも言われている技能実習生制度です(ここでは触れられていませんが、留学生も同じく)。

 映像の前半は、2016年3月に開かれた「ビルマ人技能実習生問題シンポジウム」から、被害にあったビルマ人実習生たちの証言があり、10代か20代前半であろう、まだ子どものようにあどけない女性達が日本で被った悲惨な体験に胸が痛くなります。ビルマ人実習生のために闘っている弁護士が技能実習生制度について「日本政府は国際貢献と言っているが、これはウソ。日本の中小企業が外国人労働者を安く使うための制度です」と断言するのが心に刺さります。後半はなぜこのような問題が起こるかということを、わかりやすく図式化して解説してあるので、この問題に初めて触れた!という方にも最適なDVDです。

 日本の難民申請者の中には、就労・犯罪目的の偽装難民がいてそれがほとんどなんでしょ?…云々という意見をよく耳にしますが、確かにそういう方もいるのも事実。でも、そのなかにも、本来は技能実習生・研修生や留学生で夢を持って日本に来たのに、奴隷のような労働力としてこき使われて耐えられずに脱走し、借金を返すためや、帰国できないために結果的に難民申請をしたり、犯罪を犯すしかなかった外国人もいる、というのも事実。すぐに断定したり切り捨たりせず、それを生み出した背景や原因にもっと思いを馳せて欲しい、それは日本の制度が、私たち日本社会が、彼らを追いつめた結果かもしれないのに。と、いつも思います。

(17/3/29発行)

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